近年では、飲食店をはじめとした事業のスタートで「居抜き物件」を利用する人が増えつつあります。通常の物件よりも設備が整っており、初期費用を大きく抑えられる点がメリットです。
一方で、すべての居抜き物件にメリットがある、というわけでもありません。場合によってはデメリットによる被害を受ける可能性もあるため、居抜き物件のメリット・デメリットを正しく把握することが大切です。
この記事では、居抜き物件とはなにか、通常の建物との違いや、居抜き物件を利用するメリット、注意点についてご紹介します。
居抜き物件とは
居抜き物件とは、前の所有者がキッチン家電や家具、備品などを残して退去した物件です。多くのケースで過去にテナントとして運営されており、営業に必要な内装設備の一部が残っているため、初期費用を抑えられる点がメリットです。
実際に残っている設備は居抜き物件によって異なりますが、ほとんどの設備が残っている建物なら、水道光熱費等の契約後、入居してすぐに営業を開始できます。
通常の賃貸物件との違い
通常の賃貸物件と大きく異なる点が、テナント向け設備が大きく残っている点です。テーブルや椅子、照明器具など什器はもちろん、冷蔵庫やオーブンなどキッチン用具の造作物まで設備が残ったままのケースがあります。
加えて、契約も少々ややこしくなってしまいます。通常の賃貸物件では「オーナーの貸主(不動産会社等)」と借り主の2点が接する形ですが、居抜き物件ではそれに加えて「前の借り主(設備の所有者)」が関わりを持ちます。
一般的には、居抜き物件として取り扱う時点で、各設備は弊社を含む不動産会社などが丸ごと買い取るケースが一般的です。しかし、居抜き物件として設備を無料で利用できたり、契約時に設備ごと買い取りが必要だったりと状況が異なるため、通常の賃貸物件よりも契約に注意する必要があります。
居抜き物件を利用するメリット
居抜き物件には、貸主、退去者、入居者それぞれにさまざまなメリットがあります。
・貸主
居抜き物件は初期費用を抑えて店舗を出したい事業者に人気です。そのため、空き室のままになるリスクが低減され、継続した家賃収入を得やすくなっています。
・退去者
設備や造作物を撤去する必要がなく、手間やコストを抑えられます。また、解体工事等の費用も抑えられるほか、居抜きのままスピーディに明け渡しができれば、退去日までの空き家賃を支払う負担もなくなるメリットがあります。
・入居者
事業を開始するうえで必要な設備が揃っているほか、必要コストも最低限の工事や初期投資で済むため、工事費用を安く抑えられます。そのため、投資分の回収がしやすくなるほか、工事に充てる期間が短くなるためいち早く事業をオープンできるメリットがあります。
居抜き物件を利用する際の注意点
居抜き物件にはさまざまなメリットがある一方で、いくつか注意すべきポイントもあります。居抜き物件の代表的な注意点は、「設備の劣化」「契約面の変更」「設備に対する価値観の違い」「周辺地域の顧客イメージ」などがあげられます。
設備が寿命を迎えていることも
造作物を含む内装設備は、長年使用しているとどうしても劣化してしまいます。「居抜き物件だから」と設備の状況をよく見ずに入居してしまうと、思ったよりも状態が悪い可能性があります。
寿命を迎えつつある設備をそのまま無理に使っていると、水漏れなどのトラブルに見舞われ、結果的に一から工事をする羽目になる可能性も。居抜き物件の初期費用を抑えられるメリットだけに目を向けてしまうと、結果的に大きな損失を被ってしまうため注意が必要です。
居抜き物件を購入する際は、事前にきちんとした造作譲渡契約を結び、トラブルに見舞われないようしっかりと現地調査を行っておきましょう。
契約を決めるのは貸主
先述した居抜き物件のメリットとして、退去者側が解約通知を出さずに運営を続け、借り主が見つかってから物件を引き継いでもらう、といった募集方法があります。退去者にとっては退去日までの空き家賃を支払う必要がないメリットがある一方で、新しい入居者が必ずしも以前と同じ条件で契約できるとは限りません。
場合によっては、もとの募集条件とは違った内容で入居しなければならない可能性も。テナント側の募集だけを見るのではなく、貸主から居抜き物件としての引き渡し許可を得ているのか、条件等はそのまま引き継いでいけるのか確認しておきましょう。
設備に対する買取価格はひとそれぞれ
居抜き物件では、設備を据え置きで利用できる点がメリットです。特に最新の設備が取り入れられていれば、それだけ購入価格も高まります。一方で、買取価格や代金は客観的な基準で決められる点に注意しなければなりません。
たとえば、「とても価値の高いオーブンを相応の額で買い取ってほしい」と伝えても、新しい入居者からすると利用価値がなく、「そこまで価格は出せない」となってしまいます。その結果折り合いがつかず、話し合いが頓挫してしまうケースも少なくありません。
同系統の職種でも価値観は人それぞれのため、両者が納得の行く価格設定で売買するのは難しくなっています。
周辺地域のお客に悪いイメージが根付いていないか
同業種の前借主が、周辺地域のお客へ悪いイメージを与えていないか注意が必要です。外観や内装が似通ったまま店舗を運営していると、良くも悪くも印象は定着したままとなってしまいます。
そうすると、以前の印象を抱えたままのお客は、新しい店舗へ足を運んでくれないかも知れません。居抜き物件として内装設備はそのままだとしても、外装などで入れ替わったことをしっかりとアピールする必要があります。
居抜き物件は三者三様のメリットがある賃貸物件
居抜き物件とは、内装設備をそのままに新しい入居者へ引き継げる賃貸物件です。テナント運営など、新しい事業スタートに必要な初期費用を抑えて入居できるため、近年では人気が集まっています。
そのため、「貸主は新しい入居者が見つかりやすい」「退去者は退去費用を抑えられる」「入居者は初期費用を抑えられる」と三者三様のメリットが得られます。
興味のある方は、ぜひ一度弊社スタッフまでお気軽にお声がけください。